「夏の呼吸」表題作、読み終えての感想
先日、トーク&サイン会で購入した、藤澤仁さんが綴った「夏の呼吸」
「夏の呼吸」「雨傘」の2作品が収録されています。
夏の呼吸は、藤澤さんが20歳の頃に綴られたもので、1992年の「中央公論社新人賞」の最終候補に選ばれた作品となる。
今回は表題作の「夏の呼吸」を読み終えたので、短いながらも、忘れぬうちに感想を綴る。
チーム夏の呼吸一員より
願いの残像は、ノイズのようで
鮮明に読み取れる少年の心象風景が、読み手を物語に導いてくれる。
悲しい出来事は、誰もがそう簡単に忘れることができなく、
胸をじりじりと焼け付けていく。
そういった記憶や思い出が、読み手を物語に結びつける。
まだ哀しみに染まらない青き胸の心無い強さと
潮風を感じる夏の影
どのような世界が見えるのか、すんなりと読み手に想像させる。
人の生は、どう向き合うのか
わからないことだらけ。
けれども、何でもないようなきっかけと、
勢い任せで、昨日の引力は、超えられる。
そこから何かが、芽吹くかもしれない。
願いの残像は、ノイズのようで
気づかぬうちに、消えゆくのだろう。
哀しみの果てに、波打つ時間の、向こう側へ。
それは人としてありふれた日常で、けれども繊細で。
私にとっての夏の呼吸は、うたかたの夢のような物語。
気になった方は是非、読んでみてください。
P.S.「あとがき」から読んでも大丈夫です。